手帳や日記の撮影禁止について。

手帳類図書室では、プライバシーの観点から日記や手帳の撮影を禁止させていただいております。
SNSなどで公開されて個人が特定されてしまった場合に責任が取れないからです。それは書き手や書かれた記録を尊重することでもあると考えています。

改めてこの話をする背景として、手帳類図書室を訪れたお客さんが手帳の中身を読める状態で撮影し、インターネット上に公開され、元の書き手の方がそれを発見し困惑するというできごとがありました。
公開された方には削除対応していただきましたが、次の対応として、この書き手による手帳を手帳類図書室での公開リストから外しました。読める手帳が1人分なくなったことになります。

ここからは、一連の経緯を説明しつつ、手帳類図書室の考え方についてあらためて説明させていただきます。長いですが、手帳類に興味を持たれた方、特に寄贈を検討されている方には読んでみてほしいです。

最初に経緯から。手帳を売っていただいた方から連絡がありました。インターネットに自身の手帳の中身が公開されていて、しかも自身の人間関係に関わる箇所が読める形になっている。自分が特定されるのならまだしも自分以外のかたに迷惑がかかるかもしれないので心配している、という内容でした。

これはいけないと思ってすぐに公開した方に削除対応の連絡をして、削除していただきました。ただ、一瞬でもインターネットにアップしてしまうと誰かが保存→再度公開されてしまうという危険性があります。今回のケースでは公開した人に悪気はなかったと思うのですが、シェアされた第三者がどう受け取るかまでは予測がつきません。元の書き手の方にとっても手帳類図書室にとっても取り返しのつかないダメージになる可能性がある重たい行為です。

このリスクは当初から想定はしていたため、アップした個人の問題とするつもりはありません。実際のところ、これまで数年の運営で実害がなかったので、安心し始めていたのが正直な感覚です。ただ、今回のケース以外でも中身を撮影しようとされるお客さんがいると聞いて、あらためて注意(お願い)をしなければならないと感じ、この記事を書いています。

手帳類図書室が集めている記録は、「誰かに見せることを前提とせずに書いたもの」です。昨今SNSで自分が書いた手帳の中身を公開される方は少なくないですが、同じ手帳でも前提がまったく違います。手帳類図書室では、デリケートで私的な(=プライバシーを含んだ)記録が書き手の元から離れることで、私的さを保ったまま共有可能な記録になると考えています。そしてこれまで共有されてこなかったがゆえの可能性を多くの方に体験してみてほしいのです。

しかし、共有可能な私的な記録は完全ではありません。SNSなどに中身の画像をアップされることで再度危険なプライバシーになりえます。だからこそ、手帳類図書室のようなオフラインの独立した空間を用意し、そこでだけ読める体験としたのです。それゆえに、手帳類図書室で読んだ手帳がもし知っている人だったとしても、個人特定できそうな人だったとしても、そっとしておいてほしいのです。あくまで知らない誰かの記録として楽しんでいただければありがたいです。強制力がないため、あくまでお願いになります。

なおテレビや雑誌等で中身の画像を使う場合は、必ずどのページのどの部分が使われるのか確認をとっています。収集家自身がTwitterで中身の画像を公開するときは、SNSで公開して良いと言われている手帳のみを選び、個人が特定できないと自分で思える箇所のみを載せるようにしています。ときには裏側のページに書かれているものが透けていないかまで確認することもあります。そして、それでも100%の対応ではないとも思っています。

次に、対応の話をします。問題が発生した手帳を手帳類図書室で読めるリストから外すことは、当初から収集家のなかで考えていたことです。私的な記録を共有する以上、こうしたトラブルは100%回避できるものではありません。売ってくださったり寄贈していただいた方に対しても完全な保証もできません。一方で、同じ書き手の方に何度も迷惑をかけるわけにもいきません。総合的な妥協点として、1回でレッドカード(ご迷惑をかけたかたの手帳は公開しない)というルールを内心にですが決めていました。

手帳類図書室に置いてある手帳はコレクション全体の中からバランスを考えて選んだものです。1人の書き手の手帳が抜けるのは、数ページが破られた小説のようなものです。今後、こういったことが連続で起これば、読み手が選べる手帳が次々となくなってしまうし、さらには手帳類図書室自体の運営が困難になります。

運営スタッフのかたからは撮影禁止について説明を強化してくださるとのことです。手帳類図書室へのカメラやスマートフォンの持ち込み禁止も提案してくださいましたが、そこまで厳密にするとリラックスして楽しめなくなると思うので、ここまでは行ってほしくないというのが願いです。そもそもスタッフの方はギャラリーの対応もあるため、常に気を配ることは難しいと想定されます。お越しくださった皆様には、撮影禁止についてはもとより、私的な記録に対する理解と配慮をお願いいたします。

すでに長い文章になりましたが、もう少しだけ続けさせてください。本当はこういった記事を大々的に書きたくはありません。行こうかなと思っていた人は息苦しい印象をもつと思うし、寄贈を検討してくださっている人はより慎重になると思います。それでもできるかぎりリスクについてオープンにした上で判断してほしいです。率直に言えば私的な記録を共有する完璧でコストの低い方法はまだありません。ないけれど、書き手も読み手も尊重しできるだけのことをしていきます。まだうまく言葉にできませんが、私的な記録を共有する楽しみや社会的な可能性があると信じているからです。

最後に未来の話を少しだけ。本心ではインターネットで手帳類図書室の感想がもっと読みたいし、手帳の特定のページを適切に扱い体験をシェアできるべきです。それができないのは今の手帳類図書室(=手帳類プロジェクト)の欠点のひとつです。ただ現状はプライバシーリスクを優先しています。まずは私的な記録を持続的に読むことができること。その上で、良いアイデアなどがありましたぜひお気軽にご連絡いただけたらと思います。

今後とも手帳類図書室をよろしくお願いいたします。